「着物」を読む

ある本を読んでいたら、泉鏡花の「当世女装一斑(いっぱん)」という作品のことが書かれていました。

泉鏡花は明治・大正期に活躍した作家ですから、随分前の文章になります。

そしてこれは小説ではなくて、当時の一人の女性が身支度を整えるのに、お化粧の始まりから着物を着るまで、

髪の結い方やどんな持ち物を持つかに至るまで、非常に細かく描写している作品です。

 

ちょっと読んでみたくて探してみたら、図書館にありました。

「日本の名随筆 38 / 装」(作品社)の中に収録されていました。

40人余りの方が「装」にまつわるお話しを書いた作品集です。

少し古い本なので、書かれた方の中には既に亡くなった方もいらっしゃいますが

着物を普段から着ていた時代のお話もあって、興味深く読みました。

 

抜粋ですが、ちょっとご紹介しようと思います。

「わたしは母に頼まれて、花ござに包んであるゆかたを両足で踏んだ。洗って、のりをつけて、まだ湿りの残っているゆかたをていねいにたたんで踏む。おそらく母が、そのまた母親のしぐさを真似ていたのだろう・・・」

            「匂いだついろ」より(森崎和江/詩人・評論家)」

 

「袷の裏は・・・表、裏共々に映え合い、物言い交わすような行き交いを、人と着物の間にも、着物の表と裏との間にも持たせたい。・・・きもの着では、ほんの少ししかこぼれない色ほど、大切にしたい。裏に心をこめておくのは、自己へのいとおしみでもあるようで、脱いで畳む時など、着物へのいたわりや愛情の心が湧くのである・・・」

                     「うら、おもて」より(篠田桃紅/書家)」

 

「形は心なりーーー暑い日にだらしのない形は、いっそうむし暑さを助長させるから、

シャンとした形をしとりなされ、と母は常に女の子のわたしたちに言った・・・むしむしする水蒸気の多い日本の夏に、きもののもつ難儀を難儀とせず、きものにみせられているとき私は美しい日本の「形」の中にこめられているこころの緻密さを感じ取ることが出来る。」 

                      「きものの花」より(生方たつえ/歌人)

 

この「日本の名随筆」シリーズには「着物」編もあります。

ご興味のある方は、呼んでみて下さいね。