自分らしく着物を着る

 

着付けを習いたいと思ってきもの教室に通い始めるとき、最初はとにかく「着物が着られるようになること」が目標です。

この紐を締めたらその次はこの着付け小物を手に取って・・・と、

とにかく教科書通りに、何とか「着物が着られるように」練習します。

初等科はほとんどこれで精一杯。

鏡の前で「はい、綺麗に着られました!」というところで、ほとんどの方が授業課程いっぱいです。

 

ですが、着られるようになって実際に着物を着て動いてみると、また新しい発見がたくさんあります。

階段の上り下りで着物の裾を踏んでしまったり、扉の取っ手に袖を引っ掛けてしまったり・・・

「着て実際に動く」ことで様々な気づきがあり、着物は自分のものになっていきます。

そのためには、やはり何回も着てみることが必要です。

 

何回も着ているうちに、自分が苦しくない紐の締め具合とか、締めやすい帯の長さとなどがわかってきます。

 

先日授業をしながら、「自分らしく着物を着られたら良いわね」という話をしていました。

その時に、私の頭に中に思い浮かんでいたのが篠田桃紅さん。

今年3月に107歳で亡くなったことが記憶に新しかったからかも知れません。

篠田桃紅さんは、みなさんご存知のように美術家ですが、100歳を越えて

「一〇三歳になってわかったこと」などの本もお書きになりました。

晩年まで着物でお過ごしで、もちろん作品を創作される際も着物。

半幅帯を低めに締めたゆったりとした着物姿は、ご本人そのものを表現されているかのようでした。

左の写真は、著書「桃紅一〇五歳 好きなものと生きる」(世界文化社 2017年)の中のお写真です。羽織は半世紀前の裂を切り嵌めして作られたのだそうです。この本の中には、桃紅さんのお着物やお気に入りの帯の他、ご自身が直接

墨描きしたお着物の写真も掲載されています。

 

年齢を重ねて自分なりの着こなしをされている方を見ると、「とても素敵だワ」と思います。

それは教科書には書かれていないことで、自分で発見して行くしかありません。

その人となりが伝わってくるような着こなしがいつか出来ますように・・・。