先日の新聞に「黒染めの技、今風リメイク」という記事があり、目に留まりました。
これは京都の染めの職人さんが、減少した和服用生地の黒染めの技術を生かして、
汚れたり色あせたりした洋服を黒色に染め直してくれるというもの。
宅急便で送ると、きれいに染め直して送り返してくれるそうです。
もともと京都には「京黒紋付染(きょうくろもんつきぞめ)と呼ばれる技術が伝承されていて、1979年に国指定の伝統的工芸品になっています。
和装の黒染めにはいくつか種類があるそうで、
「三度黒」と言って染料や媒染液の種類を変えて三回染める方法や、
はっきりとした黒色に染まる化学染料を使ったもの、
また染め方も、引き染め、染料に浸す手染め、あるいは機械染めなど様々。
黒に染めるといっても黒一色に染めるのではなく、
「紅下」「藍下」と言って下染めに紅や藍を使用することもあるとのこと。
そうした重なりの上に染められた黒はとても深みのある色になるのだそうです。
そんなところも職人さんの技術ですね。
着物にとって「黒色」は特別な色。
第一礼装である男性の紋付・留袖・喪服などは、全て黒色ですね。
初等科の修了試験に留袖を着ていただきますが、
その着姿は皆さんとてもしっとりとしていて素敵です。
深みのある黒色は、私たち日本人を美しく見せてくれるのかも知れませんね。
先述の「黒染め」とは異なりますが、「大島紬」にも黒色のものがあります。
こちらは大島に自生する植物テーチキ(車輪梅)を染料として土地の泥で鉄媒染し、
独特の黒褐色の地色を生み出します。
このため「泥染め」とか「泥大島」などと呼ばれたりすることもあります。
大島紬は、まさに大島の風土が生み出した織物です。
いずれにしても、伝承されてきた技術が途切れることなく、
時代の変化に応じながら継承されて行くことを願わずにはいられません。