夏の着物

「夏着物の文様とその見方」(誠文堂新光社)より
「夏着物の文様とその見方」(誠文堂新光社)より

夏らしい暑い日が続いていますね。

7月・8月は「盛夏の着物」を楽しむ時期。

蒸し暑い季節ですが、実はこの時期の着物には色々な種類があります。

いかに涼しく見える演出をするかを考えながら、

短い「夏の着物」の季節を楽しみます。

 

先日、生徒さんがステキな夏の着物を着ていらっしゃいました。

紗の生地に所々に墨で海老が描かれている夏らしいお着物でした。

紗は透け感があるので見るからに涼しそうで、とてもステキな装い。

盛夏の着物は生地によっては長襦袢まで透けて見えます。

この生徒さんは白の長襦袢を着ていらっしゃいましたが、

「例えば流水柄の長襦袢を着ていたら、

 まるで海の中で海老が踊っているように見えるわね」。

 

盛夏の着物は透けることを見越して、お洒落な長襦袢を身につけて、

着物の透け感と共に楽しむ・・・という高等テクニックもあります。

最近では白の長襦袢が多くなり、「おおっ!」というような長襦袢をあまり見ませんが、美人画などには描かれています。

 

左の絵は、上村松園の「待月」の一部ですが、

黒い着物の下に赤い柄の長襦袢が透けています。

とても涼やかに見えますね。

うちわを持った右手首には長襦袢が直にちらりと見えています。

 

先日NHK「美の壺」で夏の着物を特集していましたが、

その中で「夏の浜ちりめん」というのを紹介していました。

ちりめんの二大産地は丹後と長浜ですが、この長浜で生産されるちりめんは「浜ちりめん」と呼ばれています。

 

ちりめんは一般的に経糸には撚りをかけず、緯糸に右撚り・左撚りの糸を交互に入れることでシボを出します。

夏向けの「浜ちりめん」は経糸にも撚りをかけて生地の表面のシボをたくさん作り、

このことで肌に付かないさらっとした生地が出来るのだそうです。

またシボが多いために生地の表面にたくさんの凹凸が出来、これが友禅染めをする際に描かれる文様に陰影を生み、

とても深みのある色合いに出来上がるのだとか。

 

番組の中でこの「浜ちりめん」に描かれた友禅染めを見せてくれましたが、

色調に深みがあって、とても美しい仕上がりでした。

こんな染の着物も着てい見たいワ、と思いました。