きものカルチャー・初等科の修了試験では、「留袖を15分で」着ます。
先日こちらの初等科の生徒さんがこの条件を見事クリアして、修了試験に合格されました。練習の成果で、とてもきれいに着ていらっしゃいました。
留袖には背紋、胸の脇に左右の抱き紋、後ろ袖に右左の外袖紋
の五つの紋がついています。
着物の格はこの紋の数によって決まりますが、留袖や男性の紋付羽織袴は五つ紋で、
和装の第一礼装になります。
修了試験では、定められた時間内にこの留袖を着なければなりませんが、ただ着れば良いのではありません。
後ろの背紋が背中心に、前から見た時に左右の抱き紋が左右同じ位置に出ていなければいけません。
留袖の場合は地が黒いところに紋は白く抜けていますから、少しのずれでも目に留まります。
さてその紋ですが、ご自分の紋をご存知ですか?
なんと紋の数は2万5000以上もあるそうです。
左の写真は背文の「根笹」ですが、根笹紋には、変り根笹、又付き根笹、雪持ち根笹・・・
また丸に根笹、丸に陰根笹、丸に若根笹・・・などもあるそうですからたいへんです。
ちょっと見ただけでは区別がつかないものもあります。
こんな感じですから、紋入れをお願いする際に間違いを起こさないためには、
口頭ではなくて、見本を渡す方が確実です。
着物にこの紋を描き入れて下さる職人さんを「紋章上絵師」と呼びます。
右の小説は、紋章上絵師が登場する話も載っている短編集です。
以前なにかの雑誌で「着物が描かれた小説」の特集があり、
それをコピーしておいた中から選んで、先日図書館で借りて来て読みました。
1990年発行の古い小説で、作家の泡坂妻夫さんも若い方はご存知ないかも知れませんね。
私はお名前は聞いたことがありましたが、この方が実際に紋章上絵師だったことは今回初めて知りました。
先述したように紋には細かな違いがあるので、昔から伝え間違いによるトラブルはよくあったようで、この短編集の中にもそんなお話が描かれています。
泡坂さんはこの本で直木賞を受賞されているそうです。
ご興味のある方は、是非読んでみて下さいね。